第2章  寂しさの色は《和助》

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初めはただの憧れだったと思う。 姿を見れば落ち着かなくて、 こんな風に 胸がいっぱいになるなんてこと 本当にあるんだなぁと驚いた。 でもひと月くらい経った頃か、 女にしては背の高い辰乃が 小柄な奉公人に高い戸棚から 木型を取ってやったとき、 『お嬢さんがいりゃあ 男手なんか要らないねえ』 と奉公人が冗談半分で言うので 辰乃も笑っていた。  でもその眉は笑っていなかった。 ふと気になって見ていると、 あちらを向いた 辰乃の背中が泣いている。 想像に過ぎないのだけど、 僕にはそう感じられた。 そうしたら辰乃が 急に小さな女の子に見えて、 たまらなく抱き締めたくなった。……
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