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初めはただの憧れだったと思う。
姿を見れば落ち着かなくて、
こんな風に
胸がいっぱいになるなんてこと
本当にあるんだなぁと驚いた。
でもひと月くらい経った頃か、
女にしては背の高い辰乃が
小柄な奉公人に高い戸棚から
木型を取ってやったとき、
『お嬢さんがいりゃあ
男手なんか要らないねえ』
と奉公人が冗談半分で言うので
辰乃も笑っていた。
でもその眉は笑っていなかった。
ふと気になって見ていると、
あちらを向いた
辰乃の背中が泣いている。
想像に過ぎないのだけど、
僕にはそう感じられた。
そうしたら辰乃が
急に小さな女の子に見えて、
たまらなく抱き締めたくなった。……
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