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萌黄野の色褪せて
初夏の風吹けば、
梅雨明けに売り出す
水まんじゅうの
新作の試作が始まる。
半透明の薄皮の中に、
今年はどんな水菓子が入るのか。……
えんじ色の銘仙(=安価な絹の着物)
の仕事着にたすきを掛けていると、
咲子が赤い顔をして出勤してきた。
髪に一斤染め(=ややくすんだピンク)
のリボンをつけて。
こちらから聞くまでもなく
咲子の小さな唇がほころんだ。
「その、いただきものなんです。
きっと似合うと彼が……言うから」
恥ずかしそうに顎を引く咲子は、
女の私でさえ抱き締めたくなる
愛くるしさだ。
お姉さまとお揃いね、
と屈託なく笑えば
こちらまで幸せな気持ちになる。
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