第5章  翳り 《辰乃》

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週末に予定をといっても 普段は仕事ばかりで 連れ立って歩く女友達もいない。 過去にはいたが、 思えばほとんどが 結婚してしまった。 同い年で独り身なのは 私くらいなものだ。 結婚、か。 そんなに良いものであろうか。…… 何を見るともなく 西船橋の方まで 徒然に足をのばした私は、 薫風楽しみながら 見慣れぬ道を歩いた。 途中、 洒落た甘味所を見つけて つい中を覗いた。   洋風の飾り戸棚や机に椅子が まず目に入る。 薄紫の矢がすりに リボンがふんだんについた サロン(=エプロン)を身につけ、 愛想をふりまく女給たちは まるで蝶々だ。
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