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鈍く光る刀身はいつも
迷いなく美しい。
とりえのない私は、
これを持てばその美しさが
手に入りそうな気がして、
それで
居合いを始めたのだ。……
『もうすぐ私の弟が
結婚することになってな』
『従姉妹のお姉さまが
明治神宮で式を挙げられて、
そこで出会った方ですの』
阿万音の声と咲子の声が
頭の中で入り交じる。
私は咲子に
阿万音を会わせたことは
なかったし、
名も明かさなかった。
でももし会わせていたら、
咲子は阿万音を
選ばなかっただろうか。
きっと選ばなかったと……
いや、分からない。
現に阿万音は
私を裏切った。
人の心なんて、分からない。
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