第5章  翳り 《辰乃》

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滝のような髪…… 朱鷺色のリボン 金朱色のリボン 一斤染めのリボン…… 滝のような髪。 ……こんなもの、 なまじあるから苦しいのだ。 だったらなくしてしまえ。 そうすればもう二度と 誰も私に リボンなんて贈らない。 髪を一房もちあげて、 真剣の刃を当てる。 思いきり柄を引けば ブツ、と音をたてて 髪が切れた。 もう一房もちあげて刃を当てる。 柄を引こうと力を込める。 「……何やってるの!」 え?   と思った時には 真剣の柄に 象牙色の手が触れていた。 ふいをつかれて剣を奪われる。 奪った相手の顔を見て 私は呆然と立ちつくす。
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