《第1話 辰乃編》第1章《辰乃視点》

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「本当に何でもないのだ、   き、気にするな……しないで」   そして私ときたら、 付き合うている男の前ですら この通りの口調。 元下級武士である祖父の影響だ。 祖父は明治維新で 士族が軒並み落ちぶれた際に、 裸一貫この八ツ志摩堂を築いた 芯のある人だ。 ……あのコワモテの祖父が、 何でまた菓子屋を やろうと思うたのか それはいまだに分からぬ。 ともあれ祖父にいたく 可愛いがられて育った私は、 祖父の野武士のような 話し方が移って 二十歳になった今でも このありさまだ。
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