《第1話 辰乃編》第1章《辰乃視点》

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「――私の弟が」    「うん?」 「弟が結婚することになってな。 先をこされてしまった」    「ほお……そうなのか」 ぼんやりとした返事しか 返せずにいると、 彼――阿万祢(あまね)は  なぜだか少し赤い顔をして 口もとに手をあてた。 「辰乃はその、どう思う」 「うん?」 何が。と素っ気なく問うと、 いや……と、阿万祢は 言葉を濁しながら言った。 「だからその、結婚について」 結婚。何だ結婚か。 それについては明確な答えがある。 「うちが代々続く菓子屋なのは 知っておるだろう」   ああ、と阿万祢(あまね)が 短く答える。
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