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「――私の弟が」
「うん?」
「弟が結婚することになってな。
先をこされてしまった」
「ほお……そうなのか」
ぼんやりとした返事しか
返せずにいると、
彼――阿万祢(あまね)は
なぜだか少し赤い顔をして
口もとに手をあてた。
「辰乃はその、どう思う」
「うん?」
何が。と素っ気なく問うと、
いや……と、阿万祢は
言葉を濁しながら言った。
「だからその、結婚について」
結婚。何だ結婚か。
それについては明確な答えがある。
「うちが代々続く菓子屋なのは
知っておるだろう」
ああ、と阿万祢(あまね)が
短く答える。
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