第1章

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広菜は幸せだけど、全てが幸せなわけではない。 初めての妊娠ってどんな感じ? 出産ってどれくらい痛い? 母に聞きたいことはたくさんあるのに、 母は最近亡くなったばかりだ。 末期の肝臓ガンだった。 余命宣告されてから半年、医師の予言通り まるで約束されてたかのようにちょうど半年で亡くなった。 どうか母に 一瞬でいい。 一瞬だけでいいから この子に会わせてあげたかった。 ぐるぐるぶるるるんとお腹の中で動く我が子が可愛くて仕方なかった。 お母さん・・・私 頑張って産むから。 あと2ヶ月、もし母が生きてくれていれば、この子に会わせられたのに。 紅茶を飲む手が フッと力が抜け、カップを落としそうになる。 目から涙が滲む。 やだな、もう。 妊婦生活って、本当は明るくて幸せなはずなのに どうして私の妊婦生活は こんなにも暗くて悲しいんだろう。 それでも、前を向いていかなければいけない。 どんなに これから始まる子育てが大変でも、不安でわからなくても、聞きたい母は もういないのだから。 きっと 育児を休みたくなっても、私には休める場所は もう無いのだ。 羽根を休めることも出来ず、飛び続けなければならない。 母がいないって、きっとそういうことだ。 「赤ちゃん、私、頑張るから。赤ちゃんも一緒に頑張ろうね。」
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