第1章

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10分間隔で痛いことが夜中に起こる日が続いた。 本陣痛に繋がらない。 これは前駆陣痛と言われるやつだ。 怖かった。 強くならなきゃいけないのはわかってる。 もう逃げられないのもわかってる。 駆けつけてくれる母はもういない。 旦那が仕事に行ったら、家にいるのは私1人だ。 しっかりしなきゃ。 陣痛タクシーのメモは、いつでも取り出せるようにバッグの内ポケットに入れてある。 不安に駆られすぎて 思わず電話を握りしめた。 こういう時に頼れるのは友達だ。 「もしもし。」 友達と話してるうちに、気分はだいぶ落ち着いた。 「もうすぐ産まれるんじゃない?楽しみだね」 そう笑って話す友達に、思わず本音が出てしまう。 「うん。でも、なんか怖くて。私 頑張れるかな。」 「何言ってるの!頑張るのは赤ちゃんなんだから! あんたは、そのお手伝いをするだけ! あんたが弱気でどうするの! 1番可愛い赤ちゃんが、1番苦しい想いして頑張ってる時に母親のあんたが1番に応援してあげないと!」 その言葉を聞いて 我慢することも知らない涙が 目からほろほろ溢れた。 そうだよね。 1番苦しいのは私じゃなくて赤ちゃんの方だ。 赤ちゃんの方が、あんなに小さな体で命がけで頑張るのに、私が弱気になんかなっててどうするんだろう!!。 泣きながら 強くなろう!もう迷わない! そう決心した。 もう私の目に迷いなんて無かった。
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