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男は女性をトラックから振り落とすと、トラックの前方に現れるゾンビを弾き飛ばしながら、道を急ぐ。
昨晩見ていたテレビの番組で、この先の幹線道路を右に曲がった先に、避難所がある事を流していた。
右に曲がり、放棄車両の列の間を強引に進む。
しかし数キロ進んだ所で、道の先にバリケードが築かれている事に気が付く。
男は舌打ちをすると、ギアをバックに入れ、今走ってきた道をバックで逆走する。
曲がってきた交差点の近くまで来たとき、行くときは強引にすり抜けたダンプカーにぶつかり、タイヤが空転し進めなくなった。
逃げ場所を探す彼の目に、建物に見え隠れしながら交差点に向かって走ってくる、自衛隊の装甲車が映る。
彼は木刀を手にして運転席の窓から屋根に這い上がり、コンテナの上で装甲車が交差点を曲がって来るのを待つ。
交差点を見つめる彼の目に何時まで経っても装甲車の姿は映らず、寧ろ彼の耳に、装甲車のキャタピラ音が遠ざかって行くのが聞こえてくる。
彼は叫んだ。
「待ってくれ――! 助けてくれ――! 誰か――! 誰か助けて――! 」
彼の助けを呼ぶ声に反応したのは、ゾンビだけだった。
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