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1両の水陸両用車AAV‐7が、住宅街と商業地区を分ける道を走っていた。
住宅街の直ぐ傍を走っているにも拘わらず、AAV‐7の行くてに立ちふさがるのは、ゾンビだけである。
AAV‐7は立ちふさがるゾンビを跳ね飛ばし、キャタピラで蹂躙しながら走行していた。
操縦席の後ろにある車長用ハッチから身を乗り出し、周りを見渡しながら、車長が操縦手に声をかける。
「道、あっているのだろうな?」
「多分大丈夫だと思います」
「心許無いな」
「仕方が無いですよ」
砲塔のハッチから身を乗り出している、砲手が割り込む。
「通ろうとする道の大半が、放棄車両で埋まっているのですから。
この道のように、放棄車両が殆ど見当たらない道の方が、珍しいくらいですからね」
彼らは通ろうとする道の大半が放棄車両で塞がれているため、本部が置かれている避難所に行くのを止め、駐屯地に向けて帰隊途中であった。
彼らは逃げ損なった住民を救出するため、キャビン上面のハッチも開けられ、乗車している隊員達が身を乗り出し、四方に目を配っている。
四方に目を配っている隊員の1人の耳に、子供の泣き声が聞こえて来た。
「子供の泣き声が聞こえる! 」
その怒鳴り声で即座に、AAV‐7は急停車する。
乗車している隊員達は目を皿のようにして、聞き耳を立て、子供の姿を探す。
車両の一番高い位置にある、砲塔上のハッチから身を乗り出していた砲手が、交差点の角にあるコンビニの屋根を指差して叫ぶ。
「あそこだ! 」
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