プロローグ

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河に沿って伸びる堤防上の遊歩道に散開した隊員達が、川底を歩いて渡河してくる奴らや、河の反対側に広がる住宅街から現れ、土手を這い上がってくる奴らの頭を小銃で撃ち抜いていた。 彼らが乗車してきた水陸両用車AAV‐7の車体の上に立ち、双眼鏡で対岸を眺めていたAAV‐7の車長が、砲塔上のハッチから身を乗り出し、同じように対岸を眺めている砲手に声をかける。 「昨日通過していった台風のおかげで、河の水が増水しているから、渡河できる奴らも少ないな」 「しかし先程より、対岸に姿を表す奴らの数が、増えているように見えますが?」 その時。 彼らの数百メートル背後にある橋の上で、複数の爆発音が響く。 橋の上では、彼らが所属する部隊がバリケードを築き、検問を行っている。 爆発音に続き、小銃の乱射音も聞こえてきた。 対岸を眺めていた車長が、双眼鏡を橋の上や周辺に慌てて向ける。 双眼鏡に映ったのは、橋の上から後方に向けて走る大勢の避難民と、その人の波に巻き込まれるように後方に走る隊員達の姿。 それに。 安全が確保されている避難所に、避難民を連れて行くトラックの上で、避難民に襲いかかっている感染者の姿であった。 「何故トラックの荷台に、感染者がいるのだ?」 「え!? 傷の有無を見逃して乗せたのでは?」 「あり得ない。 傷の有無を調べるため、避難民を一人一人裸にして、調べていたのだぞ」 その2人の耳に無線機からの声が響く。 「検問が突破された! 全員退避! ワァ! ぁぁぁぁ――……………………」
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