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「ちょっとだけ、吸っていい?」
「うん」
了解を得た雄介は、テーブルに放ってあった煙草と灰皿を持つと、窓際へ行った。
窓を開け、こちらへ背を向ける。外はもう夜明けで、僅かにふきこむ外気は涼しかった。
「少し、開けとく?」
「うん、いいよ」
「涼しいな。やっぱ、帰って来たって気がする」
「そうなんだ」
「ああ。向こう、夜でも暑かったから」
「楽しかった?」
「ああ、スッゲー、楽しかった」
終わってしまった日々を惜しむような呟きに、愛美もつい微笑んだ。
会話が途切れ、外からバイクのエンジン音が聞こえる。新聞配達のそれによく似たリズムで、発進と停止を繰り返している。
一服し終えた雄介が悖ってきて、ベッドの端に腰掛けた。
「キモチ悪くねえ?」
「うん。ちょっとぼーっとするけど、大丈夫」
「頭痛は?」
「ないよ」
「そっか、良かった」
小さくうなづいたあと、雄介は再び黙った。
無音の時間が、やたら重たい。どうしようか考えたあげく、愛美はテーブルへ向かった。
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