三月

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 ステージ正面奥には、汗を散らしながらスキンヘッドを振るドラムス。左には外国人のような風貌の、背の高いベースが重低音を奏でている。  右では金髪を振り乱したタトゥーだらけのギターが踊り、そして中心では、黒髪のボーカルがギターを抱え、マイクへ噛みつくように歌っていた。 (誰……?)  目が、離せない。  歌は切ない旋律と叫びを繰り返し、ノイズで創られた楽曲と絡み合う。それがうねりながらフロアへ叩きつけられ、たまらない爽快感を生んだ。  後ろから伸びた手に頭を小突かれ、背や肩に何かがぶつかるのも気にならない。ただ愛美はそこに立ち尽くし、圧倒されていた。  あっという間に迎えた一曲目のエンディングに、拳と歓声が上がる。曲の余韻を味わう暇もなく、ボーカルは正面を睨み、ガツリとマイクを掴んだ。 「ダイブ!」  叫んだ直後、光を伴った音が弾けた。  息を吐かせぬほどの早いビートに客達は叫び、モッシュを繰り広げる。最中にいる愛美も、問答無用で全身を揺すぶられた。  そのうちに前に立つ客の何人かが、背から後ろの客に飛び込み始めた。いわゆるダイブだ。
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