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「このガキ、もう良いから、ほら!」
ピアノに抱きついて離れようとしない愛美を、タツが抱えて立たせようとした。だが愛美の足はおぼつかず、タツへ全身でしなだれかかってくる。
仕方なく抱き抱えるような格好をしていると、背を寒気が奔った。
「テメエ、何してやがるよ……」
「へ?」
地を這うような声に振り向くと、まるで阿修羅のように顔を歪めた雄介が立っていた。
「勝手に触ってんじゃねえぞゴラァ!」
言い訳する間もなく、雄介の拳が飛んで来る。普段なら避けられるのに、あいにく両手は愛美を支えるためにふさがっている。
強い衝撃を右の脇腹に感じながら、タツは自分が悪ノリしたことを、少しだけ後悔した。
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