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「ね、テレビでも点けてみる?」
「ん? ああ、どっちでも」
テーブルからリモコンを取り、スイッチを入れるとニュースが流れた。
「この時間て、何やってんのかな」
何気なくチャンネルボタンを変えていくと、ほとんどがニュースと通販番組だ。一緒に観ていた雄介が呟いた。
「ホテルによっては、BSとかCS観れるんだけど」
「へえー、って、な、何で知ってんの?」
まさか通い慣れて、と続ける前に、雄介がクスリと笑った。
「バンドでさ、地方行ったときに、何回か皆で泊まったんだ。車庫とくっついてて、一部屋ナンボのとことかだったら、ビジネスよか安く上がるから」
「へえー、経費削減?」
「そ。色々カネかかるから、バンド」
「そっか……大変なんだね」
華やかな部分ばかりではないのだと知って、つい労りの気持ちが募る。すると雄介は苦笑いした。
「たまにさ、お札貼ってる部屋とかあんの」
「お札? それもしかして、出る、ってやつ?」
「ああ。前に一回当たってさ、ぶっちゃけビビった」
「うわー、すごいいやー!」
想像して本当にイヤな気分になる。もしやここにも貼られていないだろうか。
内心ドキドキしながらチャンネルボタンを押した瞬間、画面一杯に男女の絡み合う裸体が映った。
「……あ」
AVチャンネルだ。
初めて観るそれは愛美にとって、想像出来ないほどのイヤラしさで構成されていた。
しかもやたら音声がでかい。
「う、うえ、うわあああ!」
慌てて変えようとして、手からリモコンを落っことした。転がるそれを追いかけるが、変な方向に跳ねて拾いそこねた。
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