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「ちょ、壊れるって」
雄介が呆れたようにリモコンを拾い上げ、テレビへ向けた。
「あれ?」
リモコンが効かない。良く見ると、背面の電池が外れていた。女性のあえぎ声が高まるかたわら、二人で本体へはめ込もうとするが、焦って上手く行かない。
「あ、ごめ、うわ、もーヤダあ!」
「ちょ、これ逆だろ逆!」
「え、どっちがどう?」
「イヤだから、あー、もうムカつく!」
もうすぐクライマックス、というらしき場面で、雄介はテレビ本体の電源を探し、倒す勢いで切った。
「はー、良かったあ……死ぬかと思ったあ」
照れて変な汗をかいてしまった。見ると雄介も少し顔が赤い。
バツの悪さ、マックスレベルだ。
どうしたらいいか判らずに立ち尽くす愛美の前で、雄介は小さく笑った。
「……ホントは、別のことした」
「……え?」
「お前が爆睡してるとき、ホントは、キスした」
「……」
「なんか、すげー、可愛くて」
「……」
思わず、愛美は唇を隠した。嬉しいというより、驚きのほうが先に来る。
「でも、今度は謝らねえぞ」
雄介が、愛美へ向かって一歩踏み出した。近づいて来るにつれ、緊張が高まる。
もしかして抱きしめられるかもしれない-―そう覚悟していると、雄介はゆっくりすれ違った。
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