TODAY(is a great day!)

8/13
前へ
/233ページ
次へ
「好きな女が寝てたら、フツー、キスしたくなるだろ」 「……え?」  言葉の意味を理解出来ないまま、ゆっくり振り返ると、雄介は背を向けたままだ。  自分より広く大きく、男らしい。そう感じたとたん、心臓がはね上がるほどバクバクしだした。 「ちょ、風呂入ってくるわ」 「え、ええっ! そそそ、それって、まさかっ」 「勘違いすんなよ、汗かいて気持ち悪りいんだっつうの!」 「……へ?」 「つうか、マジお前って……」   呆れたような、焦れたような声とともに雄介が振り向いた。 「うえっ!」  パチン、と額を弾かれた。まるで子供のいたずらを叱るような、そんな優しい痛みだ。  思わず額を押さえると、雄介は小さく笑って、風呂場へ行ってしまった。 「……え、っと……」  残された愛美は、崩れるようにソファへ座った。まだぼんやりした頭で、雄介の言葉を反芻した。  そして三度も繰り返して、やっと理解した。 「う、うわああああっ!」  これはある意味、告白だ。  思わず押さえた顔が熱くなり、心臓が体の中を走り出した。黙っていられなくて、叫びたくなる。  すべて繋がった。あの、雄介の部屋で交わした会話の意味も、初めてのキスも、雄介の気持ちの現れだったのだ。 「あは、あははは……」  本当に、鈍い。そして残念なことに少し悲観的だ。  自己嫌悪に陥りながら、痛み出した胸を押さえた。痛みは心地よく、そして何とも言えない温かさを持って、嬉しさに代わっていく。  この気持ちを今すぐ伝えなければ、きっと消えてしまうに違いない。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加