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「うわあああ、ごめん!」
「だいじょぶ。つうか、服……ごめん」
「え? あっ……」
指摘されて目をやると、Tシャツの色が濃く変わっていた。胸から腹から、袖までじっとり濡れている。
「うわ、やだもう!」
「いっそ脱いで乾かせば? ついでに……」
顔を洗い、振り返った雄介がニヤリと笑った。
「一緒に浴びる?」
「ううう、うわー!」
愛美は真っ赤になりながら、慌てて風呂場を出た。
雄介が風呂から戻ったあと、愛美はシャワーを浴び、ついでにTシャツを干した。
ハンガーにぶら下げたそれを見ながら、二人でひとしきり笑った。
「愛美……」
名前を呼ぶ声も、下ろした長い髪をかき上げる指も優しい。
こんな瞬間が来るなんて、今夜は何て素敵なのだろう。
そっと口づけられ、ベッドへ身を預ける、温かい腕に包まれれば、その先は少しも怖くなかった。
◆
翌朝の十一時近くになって、愛美は有希と連絡を取った。
それまで彼女からいくつもメッセージが送られて来ていたが、何と返信していいか迷っていて、ずっと無視していた。
結局、朝までホールで打ち上げしていて、そのまま少し眠ってしまったと苦しい言い訳をした。有希は「本当に心配した、怒ってるんだよ」と繰り返しながらも、いざ会うと笑って許してくれた。
愛美はそれに笑顔で応えながらも、後ろめたさでいっぱいだった。
雄介と気持ちを確かめあえたのは嬉しかったが、親友が熱で苦しんでいる一方で、自分が何をしていたのか考えると、どうしても「告白された」ことを言えなかった。
「今度は私も絶対参加するから!」
額に冷却シートを貼ったまま、有希が悔しそうに言い切るのを、愛美は心の中で謝りながら頷いていた。
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