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二学期が始まる八月下旬までのあいだ、愛美は雄介と頻繁に会っていた。
雄介のバイトとバンドの練習、さらに愛美のピアノレッスンの隙間をぬっての逢瀬は短く、時には三十分だけ雄介の部屋で、ということもあった。
それでも二人にとっては貴重な、そして幸せな時間だ。
「いつまでも夏休みだったらいいのにね」
そんな願いを口にすると、雄介は首を横に振った。
「いつまでも三十度とか、マジ勘弁」
「えー? 暑いの嫌い?」
「だって、汗まみれになるだろ。俺はぜんぜん構わねえけど、お前、あとで髪がちぢれるって気にするじゃん」
少し照れくさそうに、雄介が明後日の方向へ呟く。その意味を少し考えて、愛美は思わず真っ赤になった。
「照れんな、俺までハズいわ」
雄介が笑いながら、下ろした長い髪に指を絡める。そうされても、もう愛美が怒ることはなくなった。
北海道の夏は駆け足で去って行く。
ひと雨ごとに秋が近づいて来るのを感じながら、愛美は心から、このまま夏休みが続くことを願った。
【MUSICALIVE 第一部 了】
※次ページは作者の戯言や第二部の告知などです。
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