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(すごい……)
たくさんの手が、それがさも当たり前とでも言うように、飛び込んだ人間を支えてあちこちへ運んで行く。中には前に押し出されてステージに上がろうとし、ギターの男に蹴り落とされた者もいた。
こんな光景を目の当たりにしたのは初めてだ。愛美が呆然としていると、すぐ前に立つ男がバンザイしたまま、勢い良く倒れて来た。
「キャッ!」
男の体重を、身長百六十センチほどの女の子が支えられる筈もない。周りから伸びた手も間に合わず、愛美は仰向けのまま、あっけなく男の下敷きになった。
目の前が真っ暗になり、頭に酷い痛みがはしる。圧迫された身をよじる隙もなく、やがて視界がチカチカと火花を散らした。
「おい、しっかりしろ!」
(無理、アタマ、痛い……)
遠くから誰かの声が引き止めるが、体がまったく動かず、声も出ない。そのうち意識がぐるぐる回り、フェードアウトした。
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