三月

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三月

 撃ち抜かれた――愛美はそう感じた。  彼らが音を出した瞬間、ステージで光が爆発した。暗いホールがぐわりと歪み、瞬く間に重低音とノイズで溢れ返った。 (何?)  全身を音圧で押さえ付けられ、酷く揺さぶられる。  空間じゅうにギターの音が渦巻きながら絡まり、耳をぎりぎりと締め上げる。重く鋭いドラミングと、腸を打つようにうねるベース、そして歌と言うよりは叫びに近い声が、動きを奪われた愛美の体を何度も貫いた。 (これは、何?)  もっと間近で観たい。でも目の間には、自分よりも背の高い男達が壁のように並んでいる。愛美はじわじわと前へ寄り出した客の中で、壁の隙間を探した。 「愛美!」 「へ?」  かすかに聞こえた叫びに振り向くと、すでに有希と離れていた。慌てて戻ろうとしたが遅く、周囲はガタイの良い客達に囲まれている。そのうちにどんどん前へ運ばれ、有希の顔は見えなくなった。  流れに逆らえず、押されて揉まれる。そうして最前列近くまで押し出されて、ようやく目の前の人壁の隙間からステージ上が見えた。 「あ……」
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