桜を踏みしめる

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ひらひらと桜の花びらが地面に落下していくのを見やりながら、俺達三人はお互いに溜め息をついた。 風に煽られた薄い花びらは、不安定に揺れながら俺の足元にゆっくりと落ちていく。 春の到来を知らせる立派な桜の木々が目にも鮮やかな桜並木を作り上げていて、感嘆の息が思わず漏れる。 「改めて見るとすげえ光景だよな」 俺がそう言うと、樹が「そうですね」と呟いた。 …何で花宮に対してはタメ口なのに、俺に対しては敬語なんだろう。 梅の花が咲く公園でお互いに思いを伝えあってから1ヶ月が経つというのに、樹は未だに敬語でしか話してくれない。名前は「雫月」と呼び捨てで呼んでくれるようになったのに。 部員達といる間は以前と変わらず「多田」「雨谷君」と呼び合っているが、それは勘ぐりを入れられない為だ。 「大学ってこんな感じなんだ。初めて中入ったから新鮮だなー」 「本当にわざわざ来て貰わなくてもよかったのに」 周りの視線を気にしていないのか、花宮は樹に腕組みをしながら無邪気に笑う。 彼が笑みを浮かべた瞬間に、周りの群集がざわざわと湧いた。 「樹がどんな生活してるのか興味あったし?雫月が樹のことを大事にしてるのかも確認したかったし?」 「…大丈夫だって」 意外と花宮は世話焼きタイプだったということが、樹と付き合いだしてから明らかになった。 世話焼きというか心配性? 樹が兄で花宮が弟らしいが、これじゃあどう見ても花宮の方が兄に見える。 「酷い扱いは受けてない?二人で仲良く暮らしてるのはいいけど、いちゃいちゃするのはほどほどにね」 おいおい、酷い扱いとは何だ。 俺の方がよっぽど花宮から酷い扱いを受けてんじゃねーかよ。
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