あとがき

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ここまでお読み下さりありがとうございます。 この話は大学二年の冬に約2ヶ月で書いたものです。前作『ふわりと舞う桜は』を完結させてから間髪を入れずに執筆を始めました。呪われたような3カ月間でした笑 自分では自分のことを飽き性だと思っていたのですが、案外凝り性だということが小説執筆を通じて分かりました。考え始めると止まらないと言いますか、「完結させなきゃ…」と譫言のように言い続けて、睡眠時間を削って書いていました。 「歪な愛情を求める側から正常な愛情を受け取る側になるまでの話」を書くというのが全体を通じてのテーマでした。 母親に愛される為には自分を偽らなければならないけど、偽った自分は最早嘘でしかなくて、でも愛されている充足感に浸っていないとどうしようもなく苦しくて…。という歪んだ親子関係を描いたつもりです。 子供というものは、親がどんなに無理難題を押し付けてきても、それに答えようとする一面があると思うんです。 この作品に出てくる多田樹の母親は、息子のことを「完璧な優等生」だと認識することで、自分のアイデンティティを保っているような人間です。叶えられなかった自分の夢を、息子に託して…いわば、子供のことを分身のように考えています。 一方で樹の方も「ちっぽけで弱虫でつまらない」自分を肯定してくれた母親のことを強く慕い、母の望みを叶えることが呪縛になっています。 優秀な自分でいないと否定される。それが怖くてたまらないから、本当の自分を捨てて母の愛を求めているんです。
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