世の中、そんな捨てたものじゃない

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「……モモ」 「モモちゃん、またねー」 小さい子は、そう言って母親にまた手を引かれていった。 私の頬に温かいものが流れる。 「世の中、捨てたものじゃないや……」 その時、モモがわんと声をあげた。 私は涙をぬぐってモモの目線の先を見ると、さっきのおじさんとお兄ちゃんが傘を差して、立っていた。 「遅くなった!ごめんな!モモも」 モモが、お兄ちゃんに抱きつくとお兄ちゃんは、モモを抱き締める。 そして、これでもかってくらい、お兄ちゃんの顔を舐めだした。 お兄ちゃんは嬉しそう。モモも嬉しそう。 「嬢ちゃん、よく頑張ったな」 おじさんが、そう言った。 私は首を横に振る。 「いいことが沢山あったから平気です!」 そう。世の中、意外に捨てたものじゃないんだから。 了
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