世の中、そんな捨てたものじゃない

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相変わらず雨はザアザアだし、雷はゴロゴロ。 缶コーヒーで少しはましには、なったけど。 モモを見るとモモも震えている。 そりゃ寒いよね。 忠犬ハチ公に敵っちゃうかもしれない根性だ。 私たちが待ちぼうけしていると今度は、母親に手を引かれた小さな子が、わんちゃんだー!とモモに近寄ってきた。 母親が、ごめんなさいと謝る。 小さな子はモモをなで回す。 「こんな雨の中、お姉ちゃん、何してるの?」 さすがにこんな小さな子は怖くない。 「人を待ってるの。絶対来るはずだから……」 「ふうん。早く来るといいね。お母さん、お姉ちゃんにさっきもらったやつ、あげていい?」 母親は、にこりと笑ってバックからチョコレートを出して私に渡した。 「この子のおやつだったんだけど、食べなかったから」 「そんな!悪いです!」 小さな子が、もらってーと叫ぶ。 「その代わり、また、わんちゃん触らせて!この子、なんて名前?」
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