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「大丈夫だよ。あの男は基本、雪兎の事しか考えてねぇ」
そう言って桂斗は肩をポンと叩いて柔らかな笑顔を向ける。
でもあの男に対しては疑心暗鬼が止まらない。
「でもつまみ食いも止められないよね」
「雪兎以外の『男』はない。浮気しても、愛人作っても相手はみんな『女』だから」
「それで雪兎さんを納得させているの?・・・・だとしたら、本当は彼をもっと傷付けているんじゃないのか?雪兎さん、どう思ってんのかな?」
「俺だったら・・・・・両方嫌だ」
桂斗は、恋愛についてはまっすぐで純情なところがある。浮気される事体許さない。ましてや女とそんな関係になったら、自分は身を引くだろう。
今でも俺たちの関係(男同士で兄弟で恋愛関係というところ)に罪の意識を感じているようだ。
「ねぇ、今でも雪兎さんのこと好き?」
急に聞きたくなった。
彼にとっては雪兎さんが”初恋の人”・・・・今は家族のような深い情愛に代わっているとは分かっていても、心の隅に棘が刺さったように、小さい痛みを感じることがある。
「好きって言っても・・・・今は兄貴のような、親のような・・・・穏やかな気持ち」
これは偽りのない気持ちだろう。桂斗と雪兎さんははた目から見ていても家族愛の様なものが滲み出ている。
「とにかく、俺は会長を信じていないから・・・・二人っきりで会うことはしないでくれよ」
「疑り深いな・・・・・お前だって二人っきりで会うじゃねぇか」
「俺はあの人の範疇に入らないからね。背も同じくらいで、体格も似通っている・・・・どちらかというとライバル視、かな」
「お前と張り合ってんの?」
「この間なんか有名ジムの短期集中トレーニングやって腹筋チョーキレてるって自慢してきたから・・・・」
「アイツ、もうすぐ40だってのわかってんのかな。二十歳前のヤツと比べてどうするんだ」
「気持ちも躰も若いってのを見せ付けたかったんじゃない?」
「何考えてるんだか・・・・」
「兄ちゃんが欲しくなったんじゃないかな?」
「は?」
「他人のモノは美味しそうに見えるもんだろ?」
「なっ・・・・なに考えてんだよ!バカか、お前」
「・・・・・・・・・・・・」
もちろん、そんなことをして雪兎さんにバレたとしたら、二人の関係に修復の効かない位大きな溝を作るだろう。
今日、会長のブランドの撮影に行ったとき、妙なことをアイツに言われたのが引っかかっているのだ。
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