57人が本棚に入れています
本棚に追加
明確な証拠は何もないのに―…
拾い集めたコピー用紙をぎゅっと握る。
記された字体だけじゃ、特定するにも自信がない。
こうなったらもう、私から動いて相手をちゃんと特定するしかない。
明日の朝、もっと早い時間に登校して、その瞬間を自分の目で目撃するしかない。
と、
そう決めた時、
携帯電話が鳴った。
ビクッと肩が震えてしまう。
また、おそるおそる鞄から携帯電話を取り出して確認すると、
ホッと肩の力が抜けた。
「もしもし―…」
『繭子さん、もう帰り着いた?』
携帯越しに聞こえるのは、悠馬の声。
「―…今、マンションに着いたところよ。悠馬は?」
『俺はまだ撮影だよ』
「ドラマの?」
『今は雑誌の撮影』
「そうなんだ……」
『なんだか繭子さん、声が暗い』
「え……」
悠馬にそんな指摘をされてドキッとしてしまう。
声だけでも分かってくれるんだ―…
私の様子に気付いてくれるのは嬉しいけど、今、私の周りで起こっている事は言えない。
『何かあった?』
「……ううん。仕事帰りで疲れてるのかな」
悠馬は今、とても大事な時期だもの。
余計な気にかけをさせるわけにはいかない。
「私のことよりも悠馬―…ネットのニュースで悠馬の記事が載っていたのを見たの」
『俺の記事?』
「うん。演技を評価してくれている内容だった。ドラマも好調みたいだし、凄いよね」
最初のコメントを投稿しよう!