21、ショウタイ

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明確な証拠は何もないのに―… 拾い集めたコピー用紙をぎゅっと握る。 記された字体だけじゃ、特定するにも自信がない。 こうなったらもう、私から動いて相手をちゃんと特定するしかない。 明日の朝、もっと早い時間に登校して、その瞬間を自分の目で目撃するしかない。 と、 そう決めた時、 携帯電話が鳴った。 ビクッと肩が震えてしまう。 また、おそるおそる鞄から携帯電話を取り出して確認すると、 ホッと肩の力が抜けた。 「もしもし―…」 『繭子さん、もう帰り着いた?』 携帯越しに聞こえるのは、悠馬の声。 「―…今、マンションに着いたところよ。悠馬は?」 『俺はまだ撮影だよ』 「ドラマの?」 『今は雑誌の撮影』 「そうなんだ……」 『なんだか繭子さん、声が暗い』 「え……」 悠馬にそんな指摘をされてドキッとしてしまう。 声だけでも分かってくれるんだ―… 私の様子に気付いてくれるのは嬉しいけど、今、私の周りで起こっている事は言えない。 『何かあった?』 「……ううん。仕事帰りで疲れてるのかな」 悠馬は今、とても大事な時期だもの。 余計な気にかけをさせるわけにはいかない。 「私のことよりも悠馬―…ネットのニュースで悠馬の記事が載っていたのを見たの」 『俺の記事?』 「うん。演技を評価してくれている内容だった。ドラマも好調みたいだし、凄いよね」
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