一月九日*一粒目

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   滲みはじめた視界のなかで、彼の手紙の文字が踊る。  懐かしい文字をなぞりながらも、思考はめぐっていた。  約束って、何のこと?  それに……一日一粒って?  疑問に思ったところでハッとして、同梱されていたビンの包みを剥がす。  かわいらしいビンの中には、七色の金平糖が各一つずつ入っていた。  「これを……食べろってこと?」  わけがわからないまま、何かに導かれるように私はビンのふたを開けた。  彼からのメッセージにある『約束』が何のことを指すのか、全然わからない。  でも彼が言うからには何かあるはずだ。  これを食べれば……何か思い出せるかもしれない。  小さな金平糖を一つ、指でつまんだ。白色だ。  ドキドキしながら、口に入れる。ほどけるような砂糖の甘味が広がって、溶けていく。  ……瞬間、視界がぐらりと、大きく揺れた。 .
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