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「しゃーないやん。また明日、な」
「明日……」
今の私に、中学二年の四月二十六日という明日は来ない。
昨日もその前も、ふっと気づけば現実に戻っていた。
こうやって光輝の隣に入られるのは、夢みたいに儚い時間なんだ。
このままバスに乗って帰るだけなんて、寂しすぎる。
簡単に諦められず、私は食い下がった。
「今日が満開かもしれないんでしょ? だったらちょっとだけ行こうよ、ね?」
「ええ?」
「お願い! ちょっとでいいから」
「どうしたん、今日はえらい粘るやん。明日じゃあかんの?」
「明日じゃダメなの、今日じゃないと!」
力強く言い切った後で、自分の声の大きさに驚いた。
光輝も同じだったんだろう、目を丸くして足を止めている。
彼の明らかな狼狽ぶりで我に返り、急に恥ずかしくなった。
まるで子どもの駄々だ。バカみたいだ、私。
やっぱりもういい、そう言おうとした時に、先に光輝が笑って折れた。
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