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「わかった。じゃあ行こか、藤棚」
「えっ……」
いいの? という気持ちが顔に出ていたに違いない。
小さく吹き出した光輝が、「でも」と付け足した。
「ちょっとだけやで。日が暮れるまでな」
「うん……!」
嬉しかった。って、結局は私がワガママを通しただけなんだけど。
まだ光輝と一緒にいられるんだっていう事実に、勝手に心が弾んだ。
バスに乗って十五分足らずで、けやき坂に着く。
いつものバス停で降りて、少しだけ坂道を上った。
公園の入り口から、短い階段を上がればすぐに目指す藤棚が見えた。
「うわあ、綺麗」
「そうやなあ」
私は吸い込まれるように藤棚の下へと入る。
薄紫色のグラデーションが、頭上に広がる。
小さい頃は垂れ下がる花がブドウに見えて、美味しそうなんて思ってたっけ。
品種とか、難しいことは今もわからない。
けれどこうして光輝と一緒に見られる藤の花は、特別に綺麗だった。
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