一月十一日*三粒目

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   私がじっと光輝を見つめているからか、彼も私から目をそらさなかった。  変化を確かめようとしているのかもしれない。  太陽が光輝の輪郭を照らして、オレンジ色を帯びているその顔も。  短く整えられた黒髪も、少し窮屈そうにも見える詰襟からのぞく首もとも。  光輝を形作るすべてが奇跡みたいに思えて、泣きそうになる。  「……睦月?」  瞳が潤んだことを悟られたのか、彼の眉が少しだけ歪んだ。  私は鼻をすすって、笑って見せた。  「……へへ、なんでもないよ、大丈夫」  「睦月の大丈夫は大丈夫やないからな」  「信用ないなあ」  冗談まじりのやりとりが心地いい。  こうしてずっとそばにいたい。全部やり直したいよ。 .
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