一月九日*一粒目

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   西改札を出て、左へ。  待ち合わせの人たちであふれている商業施設の前を横切って。  改札は二階にあるから、バスターミナルのある一階へとエスカレーターで下りる。  目当ての三番乗り場は、すでに行列になっていた。  バスは一時間に数本しかないから、この光景は私にとっては当たり前だ。  この感じだと、もうすぐバスが来るっぽいな。タイミングが良かった。  なんて思っていると携帯が鳴った。母からだ。  「睦月、今どのあたり?」  「バス停。もうすぐバスに乗れると思う」  「そう。じゃあ気をつけていらっしゃい」  「わかった、ありがとう」  電話の声だけなら私はきっとあの頃と変わらないはずだ。  二年。それだけかけて、やっとこの状態なんて……両親はきっと気づかないと思うけど。 .
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