「ビックリさせるな…心臓が止まったかと思っただろ」

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「よく解ったわ。残念だけど、あなたがいなくても城ヶ崎さんがきっと役に立ってくれるはず。それじゃ、さようなら」 別れの挨拶を告げると、なんの躊躇もなく引金を引く先生。 結局俺は、どうする事も出来なかった。 せめてジョーに「さよなら」くらい言いたかった…。 バーン!!! 乾いたピストルの発砲音が廃墟に響く。 痛いのは一瞬のはず、そう思ってギュッと目を閉じたけど痛みは一向にやってこない。 その代わりに何かが勢いよく俺にぶつかって来て、身体がよろける。 高校生の時、図書室の前でジョーが体当たりしてきたことを思い出した。 目を開けてみると、さっきまで鎖で繋がれていたはずのジョーが俺の身体に力なくぐったりとしなだれかかっている。 思わず抱き留めると、ジョーの背中にヌルッと生温かい感触が……。 俺の心臓が早鐘を打つようにバクバクと暴れ出す。 そのぬるついた手を恐る恐る見てみると、それは紛れもなく真っ赤な鮮血………。 「ジョー!しっかりしろ!!」 そう言っている間にも血はどんどんどんどん流れていき、ジョーの顔からは血の気が引いていく。 「早く!救急車を!!三島先生!殺したかったのは俺のはずだろ?」 「わ、私は"猫の爪"のために……私じゃないわ……」 ダメだ、もう間に合わない……。 意識が途切れそうになりながらも、ジョーが俺に向かって何かを呟く。 「ジョー!俺が解るか?俺を置いて行くな!!」 「………がい………じゃないの………」 なんだ?なにを言いたいんだジョーは。 「わたし……い………わ………ないの……」 微かに聴こえる声に耳を傾けていると、突然あの歌が俺の鼓膜を破る勢いで響いてきた。 ~~私以外私ララララーラララララララララ、ラーラーラー、マイナンバーカード♪ 携帯の着信音で飛び起きた。 …………夢か!! なんとも胸糞悪い夢だった。 しかもあの変な着信音で目が覚めるとは。 俺が失ったものは、ジョーではなく朝の貴重な睡眠時間だった。 『あ、もしもし先輩おはようございます』 まったく、俺の気持ちも知らないで呑気なもんだ。 「ビックリさせるな…心臓が止まったかと思っただろ」 ………お前のな。 『先輩ごめんなさい。司書の三島先生から図書委員長として呼び出されてしまいました』 行くな!ジョー! END
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