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「確かに人の時……人生は有限だ。 そこに抗えるものは無く、決して逆らう事さえ許されない、どうあがいても勝てないものの一つだろう。 しかし、だからこそ目先の幸福だけを見てはいけない……人生というのはその場その場の状況の事を指すものではないからね。
そしてね、幸福を遠ざけてはいけない道理というものは、その実、誰にも有りはしないんだよ。 世には、不幸を救済とする人もいれば不幸であることが望みである人もいる。 故に、年長者こそ大切に扱うべきだ。 年月をかけて蓄えられた知識がなければ、どんな土壌があっても良い作物は育たないからね」
青年が決着をつけようと言わんばかりに力を込めながら言葉を並べる。 そうして殆ど仰向けに倒れるような形になった少年から降参の声を聞き届けると手を解放し、袋の中にあった干し芋を今日はこれで最後、と言わんような表情で口にくわえた。
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