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黒く長い髪、表情のない顔、死神のような男が近づいてくる 「首を切られたか」 短い一言、でも私には心臓を抉り取られるような一言 痛い 「これでお前のやるべきことは無くなった」 痛い 「虹の橋を渡ることも出来ないだろう」 痛い 「逆さテルテルの名を持つ者よ、そもそも無理なんだ」 逆さテルテル 聞いたことがある、テルテルとは逆の存在、雨を降らせるだけの存在 仲間達がからかって言っていたことは知っている、でもまさか… 「ルテという名を与えられたお前が、太陽を見ることは出来ない」 そんなの嘘だ、逆さテルテルならあの歌を聞くことは出来ないはず 「じゃあなぜ私は歌を聞くことが出来るの?」 自分が逆さテルテルじゃないと証明できるなら、どんな些細な疑問でも投げかけてみようと思った 「逆さテルテルに向けて歌っていたんだから当然だ」 意味が分からなかった 「テルテルを吊るす過程で、運悪く逆さまになったのだろう」 男が淡々と喋る中、私はおかしな替え歌を思い出した 「テルテル坊主 テル坊主 明日雨にしておくれ」 全身の血の気が引いたのが分かった あの歌は替え歌なんかじゃ無い…逆さテルテルに雨を願う歌だったんだ ルテは絶望し、その場に崩れ落ちた 「泣く必要はない、お前は自分の仕事をしただけだ」 そう言われ、自分が泣いていることに気付く 「私は…」 言葉が出ない 自分は今までどれだけの人を悲しませてきたのだろう あの子だって私が空に祈らなければ、雨なんて降らなかったかもしれないのに、テルテルだと思っていた自分が恥ずかしい 「このまま消えてしまいたい」 私は気を失った
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