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荷造りをしている青年と父
「もう社会人か、月日が経つのは早いもんだな」
「そうだね、でもちょくちょく帰ってくると思うよ」
笑いながら答える青年に、父はせっかく子育てから開放されたんだから勘弁してくれと部屋を去る
引越しも無事に終わり、新しい生活にも慣れてきた、外に出るにもあいにくの雨、青年はまだ整理していなかった荷物を片付けようと手を伸ばす
片付けもそろそろ終わりを迎えた頃、小さな箱を見つける
「なんだこれ?」
こんなもの入れたかなと疑問に思いながら箱を開ける
中には首を切られたテルテル坊主と金の鈴、そして手紙が入っていた
「あの時のテルテル坊主?捨てたはずじゃ…」
とりあえず手紙を広げる、そこには拙い字でこう綴られていた
優へ
優が大人になった時、この箱を渡して欲しいとお父さんに頼みました。
大人になった優を見ることが出来ないのは残念ですが、きっと立派に成長していると思います。だって私の自慢の息子なんだもの!
優はこのテルテル坊主を覚えていますか?
私が病院から外出を許された日、一緒にピクニックに行こうねって約束したよね。
優は一所懸命テルテル坊主を作って、一緒に歌を歌って、私が話してあげたお話のように金の鈴も用意したね。
でもその日は雨で、優がとても悲しんでいるのを見ているのがとても辛かった。
それ以上にテルテル坊主の首を切ってしまったことが私はとても悲しかった。
どうにかしてテルテル坊主を直してあげたかったけど、私の手はもう思うように動かすことは出来なくなっていたの。
でもテルテル坊主のお話が好きな優ならきっと直してくれると思ってずっととっておいたのよ。
だけどこのテルテル坊主を見ると、優は私のことを思い出して泣いてしまうんじゃないかと心配でした。
この手紙を読んでいる時には、優はもう立派な大人で、私との悲しい思い出だけじゃなく、楽しかったことも思い出せるような子になっているよね!
このテルテル坊主もずっと虹の橋を渡れず悲しんでると思うから、私の代わりに直してあげて欲しいの。お母さんからの最後のお願い。
優、一緒にいてあげられなくてごめんなさい。
私は優をずっと愛しています、これからもずっとずっと空の上から見ているからね。
母より
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