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カーテン
ベッドはいつも窓際。そこに置いて、カーテンを開けて眠る。昔っからそういう癖がある。
遮光とか保温とかはどうでもいい。開放感の方が上回っていた。
そんな俺だけど、隣の家が改装を行うとかで、カーテンを引かざる得ない状況に陥った。
夜間工事とかはないけれど、組まれた足場を大工さん達がうろうろする。
男の部屋なんて覗いても仕方ないだろうけれど、プライバシーも一応あるし、何よりこの前の休日、起きたら窓外にうろつく人の姿が見えて、いつもなら二度寝するのに、すっかりその気が吹っ飛んだ。
だから改装が終わるまで、一日カーテンは閉め切りだ。
そう決めて、早速今日から実行した。
その真夜中。
ふと何かの気配を感じ、俺は目を覚ました。
まだ夜明けには遠いらしく、部屋は真っ暗で静まり返っている。
何時だろうと、枕元の時計にを手を伸ばした。その時に、
「開けて」
耳元で小さくそんな声がした。
反射ですら振り向けずに固まる。
威圧感などまるでない小声なのに、背筋が冷え切って動けない。
「開けて」
もう一度同じ声が頼んでくる。
今度はどうにか手が動いたので、俺は迷わずカーテンを開けた。
傍らにいた何かの気配が窓に向かう。
怖いもの見たさで振り向いたけれど、そこには何もいなかった。でも、もう一度声が聞こえた。
「閉めないで」
翌日から、俺のライフスタイルは元に戻った。
プライバシー? 大工さんの姿? そんなもの気にすんな。
向うだって男の部屋なんか見ないだろうし、男の寝てる姿なんかさらに見たくないだろう。
だから問題なし。カーテンは開け放題で結構。
…もうこれで遮る物はないので、俺に頼まず好きに部屋をお通り下さい。
カーテン…完
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