第1話

ゼロトン

妖精たちは、元気にしてるだろうか。いまごろは、毎日入れ替わる観光客を相手に、商売繁盛してるだろうか。

無人島からかえってきてから、体調がすこぶるいい。金運がよくなったとか、仕事運がよくなったとか、そんなことは一切ないけれど、体調はすこぶるいい。

たしかにあそこはパワースポットだったようだ。

そういえば、無人島で知り合った、田原くんは、どうしているだろうか。まだ宿泊しているのだろうか。

俺より先に帰っていった原田くんはどうしているだろうか。

「連絡先を交換しよう」みたいなこと

結局、誰からも切り出せなくて、そのまま別れた俺たち。

切り出したかったのか、はじめから、切り出すつもりなどなかったのか、今となってはわからないけど、たしかめようもないけれど、けれど、俺は、俺は。

いまになって悔やんでいる。

悔やんでいる。のか。みせている。のか。

まだ新しいノスタルジーに、浸かりたいだけ。なのか。

近況を伝えあうような仲になりたかった。なりたかった。のか。