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そう言われてから、自分はそんな目をしていたのだということに初めて気が付く。
無意識のうちに何も考えないようにしているからかもしれない。だから結果的に目から生気が消える。
それに王子さんが言ったことも、意識としては間違っていない。根本的に諦めているんだ。それは自覚がある。
「でもまあ、悪いのはあっちの加害者だ。そりゃ被害者にも何かしらあるんだろうけど、こっちは一人だろ」
王子さんは私に怒っているわけでも、どうにか助けてやろうとしているわけでもなさそうだった。
「大勢の方が強いのは当たり前だ。喧嘩と違って、いじめは一人対大勢だからタチ悪ぃんだよ」
ただ事実を、思ったことを伝えているだけ。まるで世間話でもするかのように、だらだらと。
私にとっては生活の一部となりつつあるそれを、いとも容易く口にする。躊躇うことを知らない。
「俺もいじめられたことあんだよ。名前のことでな。まあ逆にこてんぱんにやり返してやったけど」
「あぁ…」
「あん時思ったね。いじめって簡単に形勢逆転出来るし、別にいじめる相手が誰であってもいいんだよ」
「…」
「そんなもんなんだよ。いじめなんて。すげー曖昧な形のない、くっだらねぇもん」
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