王子と姫愛

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いじめ自体をそんなに重い話として受け止めていない様子だった。他人事だからではない。いじめに対する態度が違う。 それには賛否両論あるのだろうが、私にとってはその興味無さげな態度がありがたかった。 「だけど、ひっくり返すぐらいの力とか、動機とか、方法とか、そんなんがねぇやつには厳しいよなぁ」 王子さんはポケットから飴玉を出してきて、その包装紙をめくって直に手のひらの上に乗せる。そしていとも容易く握り潰した。 手のひらに粉々の飴玉のかすが残る。綺麗な薄桃色をしていたそれは、今や跡形なく潰れてしまった。 「現状を壊すなら、それだけの力と根気がいる。そりゃ壊すっつうんだから、自分も傷付くだろうな。それを覚悟の上じゃねぇと」 「…」 「踏み出し方が分かんねぇのは当然だろ。いじめを解決するための最善策なんてありゃしねぇ。それぞれ状況が違ぇんだから」 「…」 「だからみんな死ぬんだ。手っ取り早い。自分だけを壊すのは簡単だからな。何も辛いことはねぇ」 何も考えていないように見えて、王子さんはいじめに対してとても考えていた。 彼は手のひらをはらって、飴玉のかすを地面に落とす。きらきらと落ちていくそれは、窓から入り込む光に反射して美しかった。 散り際は美しく見えるものだけど、最後に地面に残ったかすは結局はゴミになる。美しさは残らない。
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