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「私、いじめられてるから」
無感情にそう呟くと、彼はケロリとした態度でやっぱりね、と頷いた。
「体育館裏でよくリンチ受けてるっしょ?」
「…知ってたの」
「知ってたっつーか、見えるっつーか。あそこ俺のお気に入りの場所なのに」
呆れた。この人には全てお見通しだったわけだ。分かっていて、それでも私の口から事実を言わせたのだ。あざといなぁ。
でもこれでこの人には無理に取り繕う必要もない。かえって気楽に話せるのかもしれない。羞恥も劣等感も今更だ。
「お前、泣きも喚きもしねぇじゃん? 抵抗もせず、黙ってやられてる」
「あぁ」
「その目」
まるで目潰しされるんじゃないかという至近距離で、目を指差される。思わずのけ反ると、その手は引っ込められた。
「世の中の全部諦めて不幸全部背負ってます、みたいなその生気のない目」
「…」
「多分それがムカつくんだよ。お前、絶対いじめ助長させてんぞ」
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