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まさかあの有名な王子さんと、こうして二人きりになるとは思ってもいなかった。
王子さんはこの学校のカリスマ的存在だから、女子からも男子からも人気があり、人望も厚い。
そのうえなにやら彼は、予想外なことに私に興味を示している。私はこれ以上問題事が増えるのは嫌だった。
放っておいてと思ったが、まさかそんなに上手くいくはずもない。王子さんはそのまま続けて話し掛けてくる。
「次、お前。名前は?」
「…何で知りたいの」
「だって名前分かんねぇと喋れねぇ」
「いや私寝るから、」
「さっきから寝れねぇんだろ? 話そうや」
的確に言い当てられ、言い淀む。王子さんはしてやったり顔で笑っていた。
さすがにさっきから私が寝付けずに、何度も寝返りをうっていた様子を見られていては言い訳出来ない。
どうして私なんかに構うのか分からなかったが、この時間だけだと諦めて話すことにした。誰にも見られていない。
学校でこうして会話するのは、いつ以来か思い出せないほど本当に久しぶりだった。
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