第1章 学生とフラペチーノとラテと

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あら。 そんな言葉が私の中で響きます。感情のない、なんなら感歎詞と言われる部類のただの言葉。 視線の先にあるのは、コンクリートむき出しの校舎に貼られた四限の休講を知らせる紙でした。 もう大学生活も三年目に突入した五月のゴールデンウィーク明け。残念ながら、急な休講の知らせを受けても一緒に過ごすような友人のいない私は別段喜ぶでもなく、ただ空いた時間をどう潰すかを考えていました。 夏はまだ先だと思っていたのに、山の上のこの大学には容赦なく太陽の光が降り注ぎます。私はずっと掲示板を見ていても仕方が無いと思い、食堂の方に移動することにしました。 食堂に入ると、もう午後の授業がとっくに始まっていることもあり、かなり席は空いていました。いつも私が座るカウンターの端の席も、です。 あぁ、良かった。これでゆっくりできる。 そう思いながら、食堂に併設されているコンビニに入ります。私はこのコンビニで冷たいカフェラテを買うのが習慣になっていますが、今日は足を踏み入れた瞬間から違和感がありました。「ん?」と首を傾げながら奥に進むと、その違和感の正体を確かめることが出来ました。いつも冷たいドリンクが置いてある棚が真っ暗で、故障中と書かれた紙がペタリと貼り付けてあります。 「そんな!」 休講の紙を見つけた時より何倍も感情のこもった声が出て、レジにいたおばちゃんが申し訳なさそうに私を見ています。よく店内を見渡すと、ドリンクが運ばれてきたままの箱で積み上がっていました。 私はしぶしぶコンビニを出たものの、さっきまでそれほど飲みたいはずの無かったカフェラテが脳裏をチラチラして消えなくなっていました。
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