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廃屋が立ち並び、ゴミが散乱する夜のスラム街。
そこでは人間でありながら、人々から人間として扱われない乞食(こじき)達が食料を求め、虫が たかっているゴミ箱を漁っていた。
彼らは雨に打たれながらも、血眼(ちまなこ)になって食料を探す。
「おいっ! それはアタシの物だ!」
「う、う、うるさい! 早い者勝ちだ!」
まだ一口しか かじられていないピザを見つけた中年男性に、他の乞食達が それをよこせと群がり、殴り合いへと発展していく。
そんな醜い争いを遠目から見ている少女は呆れたように溜め息を吐き、我関せずとばかりにゴミ箱漁りを再開する。
「畜生、畜生! お前なんか、死神に ぶっ殺されちまえばいいのに!」
“死神”という単語を聞いて、少女の眉がピクリと動く。
(そういえば この間も、この辺りに迷いこんできた子供を何度も食い殺していた乞食が死神に殺されたっけ)
乞食達は生きる為に手段を選ばないものが殆どだ。
中には人肉という名の食料を求め、弱そうな子供や老人を殺してまわる者だって居る。
だが、そういった事を何度も繰り返している乞食達は皆 殺された。
“死神”という正体不明の殺人鬼によって――
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