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「おい、誰か来るぞ!」
ピザを巡った争いは数分間 続いていたが、不意にバシャバシャと水溜まりを踏む足音が聞こえると、乞食達は一斉に廃屋の中や物陰に隠れていった。
少女の耳にも足音は届き、彼女は小柄な身体をゴミ箱の裏に潜める。
あとには今の争いで殺されたのであろう乞食達の死体が残った。
「ハア、ハア……くそったれ共が! こっちは一睡もしてねえってのに!!」
怒声と共に、髪を腰まで伸ばした男が乞食達が潜む この場所へ現れた。
(あれ? あの男って……)
見覚えのある姿に少女はハッとし、壁を見上げる。
彼女が目を凝らして見つめる先には、今 現れた男の手配書が貼られていた。
そこには『“無限弾薬のルベライト” 懸賞金25万グラス。重罪。上官を殺し任務を放棄、世界管理機関の無数の弾薬と………を、盗んだことにより指名手配。………さえ手に入れれば生死は問わない』と書かれている。
一部の文字が掠れて見えないが、少女は そもそも文字が読めない為、何が書かれているのかハナから分かっていない。
「…………あー、ダメだ。寝不足のせいで頭クラクラしてきやがった」
疲労感を露に、ルベライトは壁に凭れて座り込む。
そんな彼を乞食達は、獲物を狙う飢えた獣の如く見据える。
賞金首のルベライトを、無謀にも隙あらば捕まえる――もしくは殺そうとしているのだろう。
少女は いくらなんでも軍人――銃を持っているかもしれない相手に敵う訳がない、と冷静に考えるが、もはや理性を殆ど失っている彼らには そんな思考は無い。
一方ルベライトは睡魔に襲われながらも、自分を狙う乞食達の視線に気づいていた。
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