第一話 闇よりの使者

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「…………何度目だ?」 「はあ?」 突然の問いかけにルベライトが間抜けな声を発する。 コイツは何の事を訊いているのか――そう彼が思った刹那、仮面の男は さらに続けた。 「人を殺したのは何度目だ?」 「……ハッ。何の事かと思ったら それか。いちいち殺した人間の数なんか数えているか!」 高圧的な態度でルベライトは そう言ってのけた。 実際 彼は何人 殺したのか覚えていない。 昨日と今日とで、追ってくる軍人や賞金稼ぎを片っ端から撃ち殺してきたのだから。 ルベライトは元々 世界管理機関に所属していた軍人――通称『無限弾薬』だった。 無限弾薬と呼ばれる所以(ゆえん)は、彼が持つ不思議な鞄である。 鞄は『その場に固定された物』もしくは『生きている物』で無ければどんなものでも無限に入り、中に入ったものは劣化や腐敗もしなくなる魔力の道具で、何故かルベライトにしか制御できない。 それ故 移動する生きた武器庫として、あちこちの戦場に引っ張りだこにされるなど、世界管理機関で彼は重宝されていた。 しかし、昨日ルベライトは機関が目論む世界をリセットする計画を聞いてしまった。 そして その計画を阻止するべく、彼は与えられた輸送任務を放棄して上官を撃ち殺し、逃亡したのだ。
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