9年目の恋人

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「それはわかってるけど……。 でもね、菜穂……やっぱり、私……」 百々子はそこで口を閉ざした。 「……ごめんね。 百々子の言いたいことはわかるよ。 プロポーズの言葉は、ミヤから言ってほしいよね?」 今までとは打って変わって優しい菜穂の声音に、百々子の涙腺が緩みそうになる。 思いのほか心が弱っているみたいだ。 百々子はそれを悟られないように、唇を強く噛んで頷いた。 俯いて隠しているつもりだけど、それが涙をこらえている時の癖であることを菜穂は知っている。 「……ほんと、今すぐにでもミヤをぶん殴りたいわ」 菜穂はそう言うと、正面の席から百々子の隣の席へ移動して椅子に腰掛けた。 菜穂にそっと優しく背中を撫でられ、百々子の涙腺をさらに刺激する まるで「泣いていいよ」と言われているような気がした。 それでも百々子は唇を噛み締めたまま、涙を見せなかった。
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