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「それはわかってるけど……。
でもね、菜穂……やっぱり、私……」
百々子はそこで口を閉ざした。
「……ごめんね。
百々子の言いたいことはわかるよ。
プロポーズの言葉は、ミヤから言ってほしいよね?」
今までとは打って変わって優しい菜穂の声音に、百々子の涙腺が緩みそうになる。
思いのほか心が弱っているみたいだ。
百々子はそれを悟られないように、唇を強く噛んで頷いた。
俯いて隠しているつもりだけど、それが涙をこらえている時の癖であることを菜穂は知っている。
「……ほんと、今すぐにでもミヤをぶん殴りたいわ」
菜穂はそう言うと、正面の席から百々子の隣の席へ移動して椅子に腰掛けた。
菜穂にそっと優しく背中を撫でられ、百々子の涙腺をさらに刺激する
まるで「泣いていいよ」と言われているような気がした。
それでも百々子は唇を噛み締めたまま、涙を見せなかった。
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