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「ミヤってさ、無駄に顔だけはいいじゃん?」
菜穂の言う顔“だけ”は、透に対する皮肉が込められている。
親しい距離だからこそ言える、優しい揶揄だ。
「あいつ、昔から女にモテるし、何もしなくても自然と女から寄ってくるくらいだし。
それに、一ヵ月会えないってなるとそれなりに疑ってしまうわ。
浮気の気配はないの?」
「それはないよ!
透が浮気なんて……ないと思う」
語尾が弱音に変わったのは、胸を張って断言できるほど気持ちが前向きではないからだ。
透が浮気しているとはこれっぽちも思っていないし、疑っているわけでもない。
ただ、付き合って9年を迎えようとしている今でも、透が自分を好きでいてくれているのか自信がなかったからだ。
透を思い浮かべるだけで、胸が切ない想いに駆られるようになったのはいつからだろう。
百々子は俯き加減に唇を噛み締める。
その様子を見て、菜穂はやるせないような表情でため息を一つついた。
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