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一瞬、なにが起こったのかわからなかった。
二階の、チナの部屋のドアが乱暴に閉まった音で我に返る。
「……あ、悪い。妹が」
「ううん。
お兄ちゃん取られちゃう、って悲しくなったのかもね」
四人で黙ってコーヒーを飲む。
お袋がチナの様子を見に行ったが、出てくる気配はない。
微妙な空気のまま帰ることになったけれど、チナはやっぱり出てこない。
彼女を家まで送り、自分のアパートには帰らずに実家に戻った。
「チナは?」
「わざわざ戻ってきたの?
……まだ閉じこもってる。
よっぽど貴利くんの結婚がショックだったみたい」
しょうがないわね、あの子。
お袋は困ったように笑ってる。
俺だって、まさかこんなことになるなんて思ってなかった。
「チナ、入るぞ」
開けた部屋の中で、チナはベッドの隅に膝を抱えてうずくまってた。
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