1人が本棚に入れています
本棚に追加
「うわあ!」
「やあ。驚かせちゃったね」
まるで忍者のような、普通じゃない登場の仕方だった。まさか床からこんにちはとは誰も思わない。
驚いて口を押さえる私に、この建物の地下に本当の研究所が広がっていることを、男性は教えてくれた。
なんだかカラクリ屋敷みたいだ。こんな設計の建物が現実に存在することを初めて知った。
「楢原歩(ならはらあゆむ)さんだね。楢原さんの娘さんか。感慨深いものがあるね」
「はあ。あ、これ資料です」
「おお、そうだったね………うん、間違いないみたいだ。本当にありがとう。楢原さんもだけど、僕も助かったよ」
さっきまで無邪気に笑っていたのに、もう大人の研究者の顔だった。私が手渡した資料を大切そうに持ち、急ぐ素振りを見せ出す。
「じゃあ気をつけて帰ってね。帰りはセキュリティ解除しておくから安心して」
「あ、はい。ありがとうございました。母を宜しくお願いします」
「はは、歩ちゃんね。またおいで。次はゆっくりと」
最初のコメントを投稿しよう!