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「うわあ!」 「やあ。驚かせちゃったね」 まるで忍者のような、普通じゃない登場の仕方だった。まさか床からこんにちはとは誰も思わない。 驚いて口を押さえる私に、この建物の地下に本当の研究所が広がっていることを、男性は教えてくれた。 なんだかカラクリ屋敷みたいだ。こんな設計の建物が現実に存在することを初めて知った。 「楢原歩(ならはらあゆむ)さんだね。楢原さんの娘さんか。感慨深いものがあるね」 「はあ。あ、これ資料です」 「おお、そうだったね………うん、間違いないみたいだ。本当にありがとう。楢原さんもだけど、僕も助かったよ」 さっきまで無邪気に笑っていたのに、もう大人の研究者の顔だった。私が手渡した資料を大切そうに持ち、急ぐ素振りを見せ出す。 「じゃあ気をつけて帰ってね。帰りはセキュリティ解除しておくから安心して」 「あ、はい。ありがとうございました。母を宜しくお願いします」 「はは、歩ちゃんね。またおいで。次はゆっくりと」
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